インドネシアでは、10月20日にプラボウォ・スビヤント氏が大統領に就任しました。
プラボウォ氏は、スハルト権威主義体制下のエリート軍人で、前回と前々回の大統領選で
ジョコ前大統領に敗れましたが、今年2月の大統領では3度目の正直で勝利しました。
73歳ですが、壮健でエネルギッシュなリーダーであり、大統領選後、早速に活発に外遊を行い、
日本や中国を含む各国のリーダーたちと会談しました。
プラボウォ新大統領は、ジョコ前大統領の経済重視の路線を受け継ぎ、2045年に高所得国入りを目指す
「黄金のインドネシア2045」というビジョンの達成を目指すと強調しています。
同時に、「強く、独立し、公正で繁栄した国家」を追求するとしており、
食糧安全保障やエネルギー自給率の向上、国民の健康の増進などを重要な政策課題として掲げ、
給食の無償化、公務員の給与の引き上げ、低所得層支援などを進める方針です。
外交面では、インドネシアの伝統である非同盟主義、全方位外交を掲げていますが、
地政学・安全保障への関心が高く、インドネシアの国際的地位を向上させながら、
日本や米国との関係も強化する意向とみられています。
新政権の閣僚やアドバイザーは、大統領選後からすでに次期政権を見据えた人事が行われていたことも
あり、スリ・ムリヤニ財務相をはじめとする主要メンバーは留任しました。
2月の大統領選でプラボウォ大統領を支持した7政党に加え、最大政党の闘争民主党も政権への支持を
表明しており、オール与党体制となっています。インドネシア経済は5%台の堅調な成長を続けており、
今後も安定的な発展が見込まれますが、プラボウォ大統領は8%超の成長という目標を掲げています。
そうした野心的な目標がどこまで現実的なのか、強権的な政治運営や資源ナショナリズムの一層の強まり、財政赤字の拡大などを危惧する声もありますが、インドネシアの国際的な存在感が高まる中、
強力なリーダーシップで東南アジアの大国をさらなる発展に導くことが期待されています。
住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト 石井順也
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