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2026.03.17 ミャンマー コラム

【今月のコラム】ミャンマー情勢と『現代版グレート・ゲーム』

မင်္ဂလာပါ(ミンガラーバー:こんにちは!)

Myanmar Japan Thilawa Development の羽田です。

時節柄ということもあり、今回も敢えて苦手な政治テーマに挑戦してみたいと思います。

 

19世紀の『グレート・ゲーム』(※)は、中央アジアという周縁地域で英露が影響力を競い合った長期的な地政学的攻防でした。国境地帯の支配や外部勢力の介入が情勢を大きく左右した点が特徴です。

そして今のミャンマー情勢を見ると、この構図と驚くほどよく似ています。昨年末から本年初頭にかけて軍政主導の選挙が実施され、一部地域では投票が中止されたにもかかわらず「選挙完了」とされ、4月には新政権が発足すると見込まれています。

 

しかし、広大な紛争地域と多数の無投票エリアを抱えたままでは、新政権の実効支配は限定的にならざるを得ません。各地では民族武装勢力やPDFが勢力を拡大し、“割れた主権”の状況が続いています。

外部勢力の影響もまた、「現代版グレート・ゲーム」の様相を呈しています。中国は停戦調整や政治過程への関与を強め、一帯一路構想や越境犯罪対策を優先事項として押し出しています。一方で米国や国際社会の関与は弱まり、地政学的重心は非対称に傾きつつあります。国境周縁のラカイン、シャン、カチン、サガインでは戦闘が続き、支配勢力が入れ替わり、隣国の利害と密接に結びついています。

 

こうした状況下で日本がまず取り組むべきは、通商・投資の安全保障化です。一例をあげれば、ミャンマー国内の物流は戦況次第で突然途絶する可能性があるため、中国・タイ・インドを結ぶ国境回廊を活用し、サプライチェーンを複線化することで、情勢変化にも耐えられる“地政学耐性”を備える必要があります。

次に、4月に誕生する新政権の統治力が限定的であることを前提に、中央政府だけでなく、自治組織や民間ネットワークとも多層的に対話を行い、人道・民生の現場で協力を積み上げることが重要です。

また、ASEANだけでは状況改善が難しいため、タイ・インドとの連携といった多国間協力も不可欠となります。

ミャンマーが「現代版グレート・ゲーム」のただ中にある今、日本には、価値と現実をつなぐ持続的で実務的な関与が求められています。4月の新政権発足は終着点ではなく、長期的な地域安定に向けた新たなスタートラインにすぎません。

 

時局の大きな転換点に立ち会う者の一人として、過度に悲観することなく、かといって安易に楽観せず、目の前の現実を直視し、自分の頭で考えながら、少しでも良い方向へ舵を切れるよう努めたいと思います。

工業団地事業を通じて、「ビルマの人々に何を残せるだろうか」を常に自問し、できることをひとつずつ実践していきたい。

 

ティラワを護れ!!

ကျေးဇူးတင်ပါတယ်(チェーズーティンバーデー:ありがとうございました!)

 

※『The Great Game』は、英国の作家Peter Hopkirkが著した歴史ノンフィクションで、19世紀から20世紀初頭にかけて中央アジアで繰り広げられた、大英帝国とロシア帝国の覇権争いを描いた作品です。