バングラデシュの熱を、ものづくりの力へ。BSEZが切り拓く進出先の新たな選択肢
―「来て、見て、感じてほしい」。現地駐在員が語る、発展する市場と工業団地の可能性―
バングラデシュは、若く豊富な人材、拡大する国内消費市場、そして日本への強い親近感を背景に、製造業の新たな進出先として注目を集めています。一方で、インフラや制度面など、進出を検討する企業にとっては現地での事業運営に関する不安も少なくありません。住友商事がバングラデシュで日本政府、バングラデシュ政府と共に開発・運営するバングラデシュ経済特区(BSEZ)は、そうした課題に向き合いながら、入居企業が安心して事業に専念できる環境づくりに取り組んでいます。本記事では、2025年5月よりBSEZに赴任している中根営業部長に、現地で感じるバングラデシュの魅力、製造業の進出先としての可能性、そしてBSEZが目指す姿を聞きました。

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名前 |
中根 弘貴 |
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経歴 |
2017年より東海旅客鉄道株式会社(JR東海)での勤務を経て2023年より住友商事株式会社に入社。2025年5月よりBSEZに赴任し、営業部長として営業活動、ご入居企業の操業支援、エンジニアリング部門を統括。 |
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「バングラデシュは、来てみると大きく印象が変わる国です。発展の熱量、今まさに沸き立つ成長の現場を、ぜひ現地で感じていただきたいです。」 |
テーマ1:駐在員が見たバングラデシュの魅力
まず自己紹介と、現在のお仕事内容を教えてください。
2025年5月からBSEZに赴任しております、中根弘貴です。現在の業務は大きく三つあります。一つ目は、営業活動です。まずバングラデシュという国を知っていただき、次にバングラデシュで唯一のモデル経済特区であるBSEZの価値をご理解いただき、最終的にご入居につなげていく活動を行っています。二つ目は、ご入居いただいた企業の操業支援です。私たちはご契約をいただくことがゴールではなく、「ご契約いただいた時が、お付き合いの始まり」と考えています。ご操業にあたり、発生するさまざまな課題に対し、現地で伴走しながら解決を支援させていただいています。三つ目は、工業団地の日々の運営です。既存インフラの管理やメンテナンスに加え、拡張開発工事などのエンジニアリング領域も管轄しています。
実際にバングラデシュで働いてみて、日本ではあまり知られていないこの国の魅力は何だと感じていますか。
まず皆さんがイメージするより発展している国です。バングラデシュにおける一人当たりGDPは約2,500ドルを超え、首都ダッカでは約5,000ドルを超えるとも言われています。人口もダッカだけで2,000万人を超える規模であり、高層ビルも立ち並ぶ大都会です。
親日国として有名なバングラデシュですが、私自身は世界一親日なのではと感じるくらい、親日であることがビジネス面でも大きな魅力の一つかと思います。日本人であるというだけで政府関係者や現地財閥系企業の幹部と面談の機会をいただけたり、先方からビジネスの提案をいただくことも多々あります。発展著しい国でありながら、日本への信頼や期待が強いことは、日系企業にとって大きな事業機会につながる可能性があると考えています。
駐在中に「この国はこれから大きく成長する」と実感した出来事やエピソードがあれば教えてください。
バングラデシュは、北海道と東北を合わせたほどの面積に約1.8億人の人口が集まり、中央値年齢も約26歳と非常に若く国力の源泉が担保されています。実際に現地で生活していると、その人口の多さと若い働き手のパワーを強く実感します。例えば、当社の採用活動では一つのポジションに対して約600~900件の応募が集まることも珍しくありません。実際に面談をすると、英語力に優れ、仕事に対して高い意欲と情熱を持つ人材が数多くいます。そのたびに、この国の持つ成長のポテンシャルの大きさを実感しています。
また、首都近郊のインフラ整備も進んでおり、空港やMRT、幹線道路の拡張工事が続々と進められています。街を歩いていても、商業施設やマンションなどの新たな開発も行われており、今まさに国が変わっていく瞬間を目の当たりにしている感覚があります。こうした人材の熱量と都市の変化が重なり合っていることが、バングラデシュの成長を象徴していると思います。
テーマ2:製造業進出先としての可能性
企業の皆さまは、どのような理由からバングラデシュに関心を持たれることが多いのでしょうか。
大きく分けると、成長し続ける国内市場に注目される企業と、バングラデシュで製造して国外へ輸出することを検討される企業があります。国内市場に目を向ける企業は、若くて人口が多く伸び行く消費市場に早期に入り、ブランドを構築して先行者利益を獲得したいという考えをお持ちです。B to C向け、特に家電や食品、日用品などの事業を展開する企業の関心が高いと感じています。
輸出型の企業については、豊富な労働力や競争力のある人件費に加え、バングラデシュの立地を魅力に感じ進出を検討されています。特にワイヤーハーネスなどの労働集約型産業に加え、服飾資材などをバングラデシュ国内で製造し、国内の輸出型企業に販売し、その後輸出される、いわゆる「みなし輸出」型に関心を持つ企業も増えています。
近年、特に引き合いが増えている業種や企業の傾向はありますか。
2026年2月に総選挙を無事に終え、政治情勢も落ち着きを見せる中、さまざまな国や業種の企業からお問い合わせをいただいています。国内市場向けでは、消費財、特に日用品関連のお引き合いが増えていると感じており、今後は二輪や四輪の案件も増えていくことを期待しています。輸出関連ではRFIDタグといった縫製品関連の資材や、アパレル産業の裾野を支える業種からの関心高まりを感じています。
また、直近では高機能衣類やスポーツウェア向けのテキスタイルなど、より付加価値の高い製品を扱う企業からの関心も高まっています。こうした製品の製造には、大容量かつ安定した電気や水といったインフラが不可欠です。BSEZでは、従来の労働集約型産業だけでなく、より高度な製造にも対応できるインフラ整備を行っているため、バングラデシュの産業高度化を支える受け皿になれると考えています。
進出を検討する企業からよく受ける質問や懸念点にはどのようなものがありますか。
最も多いのは、電力と物流、法律などの制度面に関する懸念です。電力については、停電の頻度や電圧・周波数の安定性についてよく質問をいただきます。現在のバングラデシュは、従来から日系製造業が進出を続けてきたタイやベトナムと比べると、まだまだ発展途上であるのが実態です。
物流については、首都ダッカから南に約260km離れたチッタゴン港を経由する国際物流のリードタイムや、通関手続きに対する懸念が多く寄せられます。国の発展の証しでもありますが、貨物の取扱量が年々増え、港のキャパシティもひっ迫しており、手続きに時間を要し、製造業の皆様にとって課題となっています。また、法制度についても正直、不明瞭なところも多く、確認や解釈に労を要するのが実態です。
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「BSEZは、電力や物流などの課題をご入居企業目線で解決し、安心して操業いただける環境整備を進めています。」 |
テーマ3:BSEZだから実現できること
そうした企業の不安や課題に対し、BSEZではどのようなサポートを提供していますか。
先に挙げた課題は、製造業の皆様にとって、いわゆるカントリーリスクであると認識しています。一方で、これまで産業発展を遂げてきたアジア諸国を振り返ってみると、多くの国が同様の課題を抱えながら成長してきました。その意味ではバングラデシュが特別劣っているわけではないとも考えております。
とはいえ、これらが重要な課題であり改善が期待されていることは間違いありません。だからこそBSEZでは、日バ両政府パートナーと共にこうしたリスクの最小化に取り組んでいます。
例えば、民間企業単独では導入が難しい超高圧帯の安定した電力を供給するための変電所整備や、BSEZ敷地内への税関設置、さらには法制度の改善に向けた提言活動などを進めています。BSEZでは、これらの課題を個々の企業任せにするのではなく、工業団地として解決に取り組むことを重視しており、製造業の皆様にはぜひ現地で具体的な取り組みについて詳細をご説明させていただきたいと思っています。
BSEZは他の工業団地と比べて、どのような強みがありますか。
大きな強みは、日バ両政府がパートナーとして参画していることです。BSEZは、住友商事が中心となる民間主導の事業でありながら、日本政府の代表として国際協力機構(JICA)、そしてバングラデシュ政府機関であるバングラデシュ経済特区庁(BEZA)も事業に加わっています。
今まさに発展している国ならではの、電力、物流、制度面といった課題は、民間企業単独では解決が難しい局面に直面することがあります。そうした中、政府がパートナーとして関わる工業団地であるBSEZでは、製造業の皆様の声を束にして働きかけることで、課題解決に向けてより強力に働きかけることができます。
こうした体制こそが、現在のバングラデシュにおけるBSEZの重要な差別化要素の一つだと考えています。
現地視察に来られた企業の皆さまは、どのような点に驚かれたり評価されたりすることが多いですか。
良い意味で印象がガラリと変わり、驚かれる方が多いです。バングラデシュに対して、発展途上のイメージや生活面の不安を持って来られる方もいますが、実際に現地に来られると「思ったより発展している、安全」「想像以上に親日」といった感想を非常によくいただきます。
BSEZについては、工業団地内の運営がしっかりなされている点を評価いただいています。私を含む2名の日本人駐在員が常駐していることに加え、電気や給排水などの基本インフラがしっかりと整っており、洪水対策も施されているため、雨季の大雨の後でも敷地内が冠水することはありません。
日本企業にとっては当たり前に感じられる環境かもしれませんが、こうした点が現地では大きな安心材料となっています。産業発展を遂げた他アジア諸国で見られるような整った製造拠点の景色を、バングラデシュでも実際に確認できることが、視察に来られた方の印象を大きく変えていると思います。
テーマ4:バングラデシュで暮らし、未来を描く
バングラデシュでの生活はいかがですか。休日の過ごし方や、お気に入りの過ごし方があれば教えてください。
生活面では、特に不自由を感じることなく過ごしており、想像していた以上に暮らしやすいと感じています。休日は、ダッカ近郊でゴルフの練習をすることが多いです。自宅から車で15分ほどのところに、18ホールのコースと練習場を併設した施設があり、現地のコーチをつけて練習しています。
練習後は、ダッカ市内のレストランで食事をするのが休日の定番です。中華料理やイタリアン、日本食など選択肢も多く、デリバリーアプリも普及しており、食事に困ることはほとんどありません。最近はジムも増えており、体を動かしたい時には利用しています。こうした休日の過ごし方の選択肢の多さも、実際に住んでみて感じるバングラデシュの魅力です。
海外での事業展開を検討している企業の皆さまへメッセージをお願いします。
もしまだバングラデシュに来られたことがない方、あるいは以前訪問されてから時間が経っている方がいらっしゃれば、ぜひ改めて今のバングラデシュを見に来てください。現地に足を運んでいただくことで、発展していく国の熱量や、暮らしやすさ、安全性を感じていただけると思います。
魅力溢れるバングラデシュをご理解いただくため、BSEZの日本人駐在員が工業団地だけでなく、ダッカでの生活環境や食事、お店なども含めてご案内いたします。ぜひ皆様にバングラデシュにご出張いただき、この国の熱量と魅力を生でご確認いただければと思います。

今後、BSEZをどのような工業団地にしていきたいと考えていますか。
まずは、日バ両政府が出資する案件として、バングラデシュへの外国直接投資の呼び込みと産業多角化に寄与するため、「ご契約いただいた時が、お付き合いの始まり」をモットーに、より多くの皆様にBSEZを知っていただきたいと考えています。
そしてご入居いただく企業の皆様には「BSEZに入ってよかった」と思っていただける工業団地でありたいと考えています。
さらにその先には、バングラデシュと地域社会に愛される工業団地となり、ご入居企業で働くバングラデシュ人の従業員の皆様やそのご家族にも「BSEZという工業団地の中で働けてよかった」と感じていただけるような環境や仕組みをつくっていきたいと考えています。
⼯業団地ユニット