OMRON HEALTHCARE MANUFACTURING INDIA PRIVATE LIMITED 様
インドの健康課題に挑むオムロンがチェンナイに築く新たな生産拠点
今回は、OMRON HEALTHCARE MANUFACTURING INDIA PRIVATE LIMITEDの岩中 拓人Managing Directorに、インド進出の背景、チェンナイおよびオリジンズ・チェンナイ工業団地を選んだ理由、現在の操業状況と今後の展望について話を聞きました。
OMRON HEALTHCARE MANUFACTURING INDIA PRIVATE LIMITED

2022年7月設立されたインド子会社で、血圧計を中心とした医療機器の製造を行う。親会社であるオムロン ヘルスケア株式会社は、オムロン株式会社の完全子会社として2003年7月に設立され、京都府向日市に本社を置く。血圧計、ネブライザー、低周波治療器を主力製品に、体重体組成計、電動歯ブラシや活動量計など健康医療機器を開発しグローバルに販売している。
岩中 拓人 Managing Director

OMRON HEALTHCARE MANUFACTURING INDIA PRIVATE LIMITEDの設立当初より現地に赴任し、生産管理・品質管理から販売戦略、人事・組織づくりに至るまで、工場経営の全領域を統括。ゼロからの立ち上げフェーズを牽引し、事業基盤の構築から成長までを一貫して担う。
テーマ1:インド・チェンナイへの進出経緯
グローバルで事業を展開される中で、インド進出を決断された背景について教えてください。
インド進出を決めた理由は、大きく二つあります。
一つ目は、インドでのヘルスケアに対する需要の規模と成長性です。インドでは高血圧、糖尿病、喘息などの慢性疾患を抱える方が多い一方、人口に対して医師数も不足しており、健康管理に対する認識もまだ十分とは言えません。それゆえ家庭血圧計の普及率も低く、自身が高血圧であることを認識していない方も多く、知っていれば避けられる健康や命へのリスクがそこに存在します。
この社会課題を解決することは「地球上の一人ひとりの健康ですこやかな生活への貢献」という私たちのミッションそのものです。
二つ目は、グローバル生産戦略です。これまではインド国外の生産拠点からインド市場へ供給していましたが、今後のインド急速な需要拡大に対して、現地生産拠点からタイムリーに供給できる体制を構築することが重要だと判断しました。また欧州、中東・アフリカなどへもより短いリードタイムで供給することができ、インドに生産拠点を持つことは戦略的にも大きな意味があると考えています。
拠点選定にあたり、人材、サプライチェーン、輸出入環境、インフラなど、特に重視されたポイントを教えてください。
当社の製造する製品は医療機器ですが、電子部品はまだ輸入に依存しています。また製品の輸出も計画しています。そのため輸出入を考慮し、港からの距離を含む物流環境を重視しました。
また、生産工場を運営するためには優秀な技術系人材の確保が欠かせません。
加えて、部材の現地調達、工程の現地化を進めるために協業できるサプライヤーやパートナーの進出状況も重視しました。
その中で、チェンナイをどのように評価され、最終的な決め手は何だったのでしょうか。
チェンナイには大型港が複数あり、空港も近いため、輸出入の面で優れた立地条件があります。また、技術系大学が多く、優秀な人材を確保しやすい点も魅力でした。製造業の集積が進んでいるため、サプライヤーも充実しています。
さらに、タミル・ナードゥ州は企業誘致に非常に積極的で、進出企業への支援体制も整っています。加えて、チェンナイはインド国内では生活環境が比較的良く、駐在員や出張者にとっても暮らしやすい、来やすい都市であることが決め手となりました。
テーマ2:オリジンズ・チェンナイ工業団地について
オリジンズ・チェンナイ工業団地を初めて知ったきっかけを教えてください。
インド進出を検討する際、社内外リソースを活用してインド全土の工業団地を調査しました。その候補の一つとして、オリジンズ・チェンナイ工業団地を知りました。
最終的にオリジンズ・チェンナイ工業団地への進出を決められた理由や、他の工業団地と比較して魅力的だった点を教えてください。
大きな決め手は、インフラの安定性でした。
インドでは水害や停電が事業継続上のリスクとなりますが、オリジンズでは排水設備や水害対策がしっかりと整備されています。操業開始前ではありましたが、2023年12月のサイクロン発生時にも水はけの良さを確認できました。また、電力供給が比較的安定している点も魅力でした。
さらに、日系企業がすでに入居していたため事前に情報収集ができたことや、工業団地としては珍しいことですが日本人駐在員が配置されサポート体制が整っていたことも安心材料でした。オムロンとして自社工場設立は初で、インドに関する知見が限られていたため、日本語で相談できる環境は非常に大きなメリットでした。
オムロンは2023年にインドネシアの当社工業団地、East Jakarta Industrial Parkにも入居しています。複数の住友商事グループ運営工業団地を利用する中で、共通して評価している点は何でしょうか。
実は、当初から住友商事グループであることや、入居実績があることを意識して評価、検討していたわけではありませんでした。
それぞれの事業部が独立して拠点選定を進める中で、結果としてインドネシア、インドともに住友商事グループの工業団地を選ぶことになりました。それだけ、各工業団地の立地やサービス内容に競争力があった結果だと思います。
テーマ3:現在の操業と今後の展望
現在の操業状況について教えてください。インド市場での事業展開は想定どおりに進んでいますか。
現在は血圧計の量産を開始しており、インド市場への出荷もすでに始まっています。今後は、生産数量を増やし、ネブライザーの生産を追加し、将来的には欧州市場向けの輸出拠点としての役割も担っていきたいと考えています。
チェンナイでの実際の生活環境について、どのような印象を持たれていますか。
多くの方がインドに対してネガティブなイメージを持っているかもしれませんが、実際に住んでみると、チェンナイは非常に暮らしやすい都市だと感じています。
デリーなど大都市に比べると治安も良く、空気がきれいで、海も近く、病院やショッピングモールなど生活に必要な施設も充実しています。南インド特有のオープンな人柄もあり、人材とのコミュニケーションが円滑です。英語も通じやすく、日本人コミュニティも活発で、準全日制日本人補習校もあり、駐在者も帯同した家族にも情報交換しやすい環境があります。
一方で、日本との直行便がないことや、工場が市外の場合、通勤時間が長くなりやすい点は課題として挙げられます。
今後のインド事業の展望について、差し支えない範囲でお聞かせください。
まずは血圧計事業の拡大を進めていきます。加えて、ネブライザーなど製品ラインアップを増やし、インド市場での貢献とプレゼンス向上を目指します。
それと共にインド国内向けの生産だけでなく、将来的には欧州などグローバル市場への輸出拠点として発展させていきたいと考えています。
テーマ4:インド・チェンナイ進出を検討する企業へのメッセージ
これからインド進出を検討する製造業の方々に対して、まず取り組むべきことは何だとお考えでしょうか。
最も重要なのは、コスト戦略を十分に練ることです。
インドは、決して安価に工場を立ち上げられる国ではありません。輸入部材への依存や関税負担などにより、想定以上にコストがかかる場合があります。
また、本社側の理解を得ることも非常に重要です。初年度から利益を出すことは容易ではなく、中長期的な視点で事業を育てていく必要があります。現地だけに任せるのではなく、本社と一体となって事業を立ち上げる体制が、成功の鍵になると思います。
実際に進出を経験された立場から、今後インド進出を検討する企業の皆様へ、チェンナイの魅力や可能性についてメッセージをお願いします。
今のインドは、その経済成長を背景に政府支援の充実やサプライヤー集積の進展など、製造業が進出するタイミングとして非常に良い環境だと思います。
その中でもチェンナイは、日系企業や製造業との親和性が高く、英語が通じる技術人財も豊富で、進出先として非常に魅力的です。
多くの国の市場が発展し成熟を迎える中、この市場規模、成長スピード、将来性が備わった中で事業を展開できる経験と得た学びは事業と組織の成長につながる大きな価値があると考えています。
皆さまもぜひインドを現地現場で実体験してみてださい。その中でお手伝いできることがあれば、ぜひお声かけください。
⼯業団地ユニット