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2025.06.01 コラムフィリピン
【今月のコラム】フィリピンの選挙ってどんな感じ? 2025年の中間選挙をざっくり解説

「フィリピンって、ちょっと治安が悪そう…」「発展途上国ってイメージ」——そんな印象を持っている日本人、実はまだ多いと思います。でも実際に見てみると、フィリピンは若くて元気で、政治もめちゃくちゃダイナミックな国なんです。今回は、20255月に行われた中間選挙という大きな政治イベントについて、できるだけわかりやすく紹介してみます。

まず、フィリピンの政治の仕組みをざっくり説明すると、アメリカに似た「大統領制」を採用しています。大統領の任期は6年で再選は禁止。副大統領は別々に選ばれるので、大統領と仲が悪いこともあるのが面白いところです。国会は二院制で、上院(Senate)と下院(House of Representatives)があります。上院は全国区で24人が選ばれ、任期は6年。ただし、3年ごとに半数(12人)ずつ改選されます。今回の選挙がまさにその中間選挙にあたり、上院議員の半分を選ぶと同時に、地方の首長や議員も選ばれました。そして今回の注目ポイントは、現職のマルコス大統領と、サラ・ドゥテルテ副大統領の対立。もともと2022年の大統領選ではタッグを組んで当選した二人ですが、今は完全に冷戦状態に突入しています。そんな中での選挙だったので、国内の注目度もかなり高かったです。

サラ・ドゥテルテは、前大統領ロドリゴ・ドゥテルテの娘。強烈な政治的影響力を持つ彼女が支援した候補者たちは大健闘し、上院の12議席中5議席を獲得。その中には、父親の側近だったボン・ゴーやデラ・ロサといった、前政権のキーマンも含まれています。

一方で、マルコス大統領が後押しした候補者たちはやや振るわず、6議席にとどまりました。これにより「政権の求心力が落ちてきているのでは?」という声も出ています。さらに驚くべきことに現在、オランダの国際刑事裁判所に収監中のロドリゴ・ドゥテルテ前大統領が、地元ダバオ市の市長選に出馬して当選。しかも彼の息子・セバスチャンも副市長に選ばれ、まさに“ドゥテルテ王朝”が地方政治では依然として健在であることが示されました。この選挙結果を受けて、サラ・ドゥテルテが2028年の大統領選に出馬する可能性がぐっと高まりました。逆にマルコス大統領は、彼女への弾劾を進めたくても政治的な後ろ盾が弱まり、思うように動けなくなるかもしれません。ちなみに今回は、韓国製の最新型自動集計機(ACM)が使われて、投票と開票のプロセスがスムーズになったとも言われています。とはいえ、政治家の多くが世襲だったり、家族単位で権力を持っていたりと、王朝政治の色合いはまだまだ濃いのが現実です。

フィリピンの政治を見ていて思うのは、「人」がすべてだということ。政党よりも人物、思想よりも家系やつながり、そしてタイミングがすごく大事。日本では考えられないようなことが普通に起きる一方で、国民の政治への関心も高く、エネルギーにあふれています。2025年の中間選挙は、そんなフィリピンの政治のがぎゅっと詰まった、見応えある選挙でした。ちょっと意外で、ちょっと面白い——そんなフィリピン政治、気になったらまた覗いてみてください。

 

First Philippine Industrial Park / 栗生

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